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Sonja 1.2 (Audirvana Plusを用いたルームアコ-スティック編)
Sonja1.2を使い始めて、そろそろ一年がたち、すっかり部屋にも馴染み、そろそろ本腰を入れて、部屋のルームアコースティックを含め調整をしてみることにした。
というのも、Yg Anat3 Sig の時にはアクティブサブウーファーであった為、結構広
範囲な調整が可能で、低音部を部屋にマッチさせることが簡単に出来ましたが、Sonjaの場合、パッシブとなりあと一歩の所に手が届かず、なかなか理想的な低音を手にする事が出来ませんでした。
どの様な状況かというと、低域の量感が少なく、此処という時の力感も自分の理想とするレベルには達していない形で、原因としては部屋のアコースティックに起因しているのは間違いなく、やはりアクティブの方が良かったかなと思いながら1年あまり放置していましたが、Sonja 1.2のまだ見ぬ可能性を求めトライすることにしました。
さて、今回のルームアコースティック調整を行う上でキーとるのが、Audirvana Plusです。現在のAudirvana Plusには 、数種のイコライザが備わっており、このイコライザを使用して、部屋で生じる定在波により影響を受けている帯域を把握した上で調整をしていこうと考えています。
これでうまくいけば、Audirvana Plusを既にお持ちであれば、特段費用もかからず、皆さんにもトライしやすいのではと思い実験結果をHPに掲載してもらう事にしました。
さて、部屋で生じる定在波の影響を1番受けるのは低域部分で、オーディオが本来の力を発揮出来ない根本的な要因だと考えています。では、定在波に影響されていない音とはどんな音なのか? 身近なものであればヘッドホンを用いて聴いてみるのが手っ取り早く、もたつきのないクリアでキレのある低域を聴くことができると思います。
"じゃあ、ヘッドホンで聴けば?"と思われる方もいらっしゃると思いますが、私的には、ヘッドホンと同様のクリアでキレのある低域も、もちろん重要だと考えていますが、ヘッドホンでは体感することが困難な体を揺さぶるような量感を併せ持つことがさらに重要だと考えています。
調整を進める中で、一番重要となるのが、定在波によりどの周波数帯が影響を受けているのかまずは正確に把握する必要があります。ただし、影響を受けている帯域を探すのは、通常聴いているだけでは分かりにくく、この辺りかなと思っても、なかなか正確な位置を掴むことは非常に困難です。
言葉では少しわかりにくいと思うので簡単なイラストを交え説明をしたいと思います。下のイラストにある通り、定在波により135Hzを中心に6dBブーストされているとします。要はこの"135Hz"を何とかして探したいのですが、先程も書いたように、聴いているだけでは中々判りません。
では、どのようにするかというと、定在波により影響を受けている135Hz付近を、さらに目立つようにブーストし、定在波による影響をより顕著にしてやればよいのですが、そもそも、肝心の135Hzが判らないのにどうやってブーストすれの?と思われたと思います。
このため登場するのが、普段はあまり聞き慣れないParametoricEQ (パライコ)ですが、次のイラストにあるように、パライコで調査用のカーブを作り周波数だけを変化させ、影響のある周波数を探っていきます。
では、実際に調査を開始していきますが、同様に調整を実施される場合は、事前に必ずボリュームを(-20dB程度)下げた状態にしてください。
先ほど書いた様にAudirvana Plusには、数種のイコライザが内臓されており、その中から右図のようにAuParametric EQを選択し、音楽を聴きながら調整が可能なようにRealtime AudioUnits control and setupの項目にチェックを入れておきます。
実際の調査用カーブは、以下のようにGainを20dBとし、Qは最も幅が狭くなる20に設定します。この時、わざわざ帯域幅を1番狭くするのは、定在波により影響の出ている帯域を詳細に調査するためです。
かのように、低域であればウウーンといった感じで音が尾を引くような感じになるのがわかると思います。
言葉ではなかなか解りにくいと思いますが、やってみると意外に簡単で、コツといえば普段、自分のシステムで聴いていて、低域が飽和して聴きづらいものや、高域がキンキンしてしまうもの等、あまり自分のシステムで上手くならないソフトを選ぶことが重要になります。
“音楽 帯域”でググってみると楽器やボーカル別にどの帯域が該当するのかを解説したサイトがあるので、どのあたりが影響しているのか、そちらも参考にされるとよいと思います。
影響を及ぼしている帯域がわかれば、今度はこれらをどのように対策していくかですが、簡単なのは、定在波により影響を受けている周波数付近をAUGraphicEQ(以下、グライコ)にてゲインを落としていきます。
ただ、グライコでは、あらかじめ操作可能な周波数が決まっているので、場合によっては効果的な対応ができない場合があります。
まず、一番気になっている低域部分を調査していきます。調査に使用した曲はEaglesのHotel Calfornia(MTV Unpluged版)を使用します。
オーディオの試聴ソフトとしても有名なので、ご存じの方も多いと思いますが、冒頭のバスドラを中心に聴いていきます。
このキックドラムはうまく再生すると、低域に締りがありながら、重量感も十分あり、特に7発目のキックドラムには他の音が合成されており、その分離感も十分に聴き取れる必要があります。
拙宅の現状では、低域が少し”ボテッ”とし、分離感もそんなに高くない状態になっています。
低域を調査していくと、最初に判明した周波数は43Hzで、帯域的には、バスドラの最低域にあたる部分となり、定在波により影響を受けている部分にくると、低域が飽和し、音が尾をひき始め、”ウーー”と何かの唸り声に近い音が部屋を満たしていきます。
試しにパライコでゲインを20dBから-3dBに変更してみると、先程まで“ボテッ”とていた低域が締まりを見せ始め、キビキビとリズムを刻みだしました。
さらに調査を続けると、63Hz、165Hz、211Hz付近に見つかり、同じようにゲインを下げて聴いてみると、63Hzでは音の輪郭がハッキリとし、165Hzや211Hzでは音の立ち下がりに効果があり低域がスパッとキレを見せてきます。
ここで、とりあえず、定在波により影響している4つの周波数が判明したので、グラフィックイコライザを用いて、それぞれのゲインを落としてやることにします。ちょうどグライコには40Hz、63Hz、160Hz、200Hzの周波数が操作できるため、曲を聴きながら、簡単なゲイン調整を行い、とりあえず40Hzを-5dB、63Hzを-3dB、160Hzを-2.7dB、200Hzを-2.2dBとすることにしました。
ためしに、曲全体を通して聴いてみると、確かに、低域のスピード感やキレ、分離感はだいぶ良くなったものの、量感や力感といった項目は随分と後退してしまいました。
まずは量感を稼ぐために、グライコで50Hzから125Hz間(63Hzを除く)を全体的に2.5dB程度持ち上げることにしましたが、聴いてみると確かに、これで量感はOKとなりましたが、まだまだ面で押してくるような力感が足りません。
他に定在波により影響を受けている周波数がありそうなので、グライコの設定はそのままにして、右図のように、さらにパライコを追加し調べてみることにしました。
その結果、80Hz付近に、他に比べると定在波の影響は小さいものの、未だ影響を受けている帯域があり、さきほど量感を得るため、ゲインをアップしたのが悪さをしたみたいで、この部分を1dBに設定することで量感がありながらも、キレのある低域を得ることができました。
ここまでの調整でほぼ満足のいく形になってきましたが、まだよそよそしいところがあり、もう一つしっくりときません。
曲を聴きながら、微調整を繰り返していくと、今度は中域にも気になるところが出てきました。
これは、調整が進むにつれ、ほんの些細な周波数の乱れが判るようになった為で、当初は低域だけの調整と考えていましたが、気になる中域も調整してみることにしました。
曲は、「やなわらばー」の最新アルバムである愛歌から"小さな恋の歌"をつかうことにしました。気になっているところは、ほんの僅かですが中域のボーカルに硬さがみられ、特に声を張り上げた時に顕著になって現れ、非常に聴きづらい音になってしまいます。
先ほどと同様にパライコで探っていくと、515Hzと619Hz辺りに影響を受けている帯
域があり、この部分を-3dB程度に設定すると問題となっていた部分は解消されましたが、逆に音に生気がなくなり、聴いていてちっとも楽しくありません。
やっぱり、中域の調整は難しいなと思いながら、ゲインを調整していき、生気を失わず、且つ、問題となっている部分の除去が可能なレベルを0.1dB単位で探し、結局-1.5dBに落ち着くことになりました。
最終の調整結果は以下の通りです。
早速、最終の仕上がり具合を確かめるために、低域の確認用ディスクであるFourplayのBest of Fourplayから”Chant”を聴いてみます。
この曲は冒頭にハービーメイソンのドラムの強打があり、音の立ち上がりや立ち下がりが早くないとボヨーンと低域が緩んでしまい、逆にスピード感があっても、そこに充分なエネルギーや量感がないと、"パンッ"と上ずったりしてしまい、こうなってしまうと緊張感もなく何も面白く無い演奏になってしまいます。
さて、調整後の音ですが、これがいい感じに仕上がっており、重量感もキレも申し分なく、特に重量感は調整前の音が、"パンッ"と軽い音だったので、どのような音に変化するのか心配していましたが、"パツン"と、低域が音だけでなく、面の圧力として感じられる低音に変化していました。
違いをもう少し具体に書くと、まず最初にアタック音がして、その後に低域の余韻が続く形となりますが、アタック音では、スピード感と力感に差が出てきて、低域の余韻では、その長さと量感に違いが聴き取れます。
力の入れ方やインパクトの瞬間の音、低域の余韻などが明らかに違って聴こえてきて、今迄、気付かなかったこの違いに、改めてYg Sonjaの底知れぬ低域再生能力に驚くことになりました。
例えば最初の音を基準にすると、2打目はアタック音が弱い代わりに低域の余韻となる量感が多くなる、そして3打目はアタック音が強い代わりに低域の余韻が少なめとなり、最後の4打目はアタック音、低域の余韻も多めに聴こえてきます。ためしに補正前の音を聴いてみると、何となく違いは分かるものの、補正後のようにはっきりとその違いを見せてくれません。
結論めいたことを書く気はありませんが、結局のところオーディオは詰まるところ、部屋との戦いに尽きると考えています。
実は以前にもルームアコースティックに本格的に取り組み、随分と部屋の対策を行ってきましたが、改めてパライコによるルームアコースティックの補正効果の高さを実感する事になりました。
ルームアコースティックの厄介なところは、ルームアコースティックの補正を加えなくても、ソフトによっては、全く問題なく非常にいい音で聴こえてしまう事です。
それは、単純に定在波の影響を受ける帯域が録音されていないだけことなのですが、逆にその帯域が録音されているソフトだと、定在波の影響を受け、他は良いのに低域の1部分だけ音が悪かったりすると、ついソフトや機器が悪いと結論をつけてしまい、場合によっては機器に入れ換えにまで発展する場合もあると思います。
確かに機器のグレードを上げることで、多少の効果はあると思いますし、事実、私も
同様のグレードアップを重ねた経験もありますが、まずは根本原因であるルームコースティックの補正を行わないと、いつまでも買い換えに至ってしまうと思います。
最後に今回はAudirvana Plusを用いたルームチューニングをお送りしました。
以前にもパライコで補正を行っていた時期があり、その時は、アナログ方式のパライコを使用していましたが、ノイズの問題や、複数の設定データが保存できないなどの欠点があり、部屋の対策が進むにつれ使用しなくなりました。
それが、デジタルになり、設定データを瞬時に呼び出せ、聴き比べも非常に楽になっており、本当にいい時代になったなーとつくづく思いました。
長文におつきあいくださりありがとうございます。皆様のオーディオの一助になれば幸いです
質問等ございましたら、下記メールまでお願いいたします。
Audirvana Plus 第二弾(パライコ編)につづく 乞うご期待!